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東京高等裁判所 昭和36年(く)110号 決定 1961年12月08日

少年 K

主文

本件抗告を棄却する。

理由

本件抗告の要旨は、原審は、少年に対する前記保護事件について、昭和三十六年九月四日少年を中等少年院に送致する旨の決定をしたが、右事件において原審が認定した強盗未遂事件における少年の犯行は、金品強取の意思を有していた他人から誘われてなしたものであつて、少年自身がその意思によつて計画あるいは実行したものではないばかりでなく、少年は、右犯行後、東京都豊島区○○町×丁目所在のパチンコ店△△に店員として勤務していたのであるが、右事件によつて同店を退職したのちにおいても、同店は、少年の過去は一切これを問わず、再び少年を雇い入れる旨の温情を示しているのであつて、以上の各状況に徴すると、原決定には、少年法第三十二条にいわゆる処分の著しい不当があるから、これを取り消し、更に相当の裁判を求めるため本件抗告に及んだ、というのである。

よつて、記録を調査し、少年の年齢、学歴、境遇、家庭の事情、交友関係、本件犯行の動機、態様その他記録に現われている一切の事情を勘案し、ことに少年に対する要保護性の程度等について考察すると、少年は、十七歳の頃から盛り場を徘徊したり、好ましくない友人らと交際したりするようになり、その結果、八回にわたり強盗あるいは同未遂の罪を犯すに至つたので、昭和三十五年三月東京家庭裁判所において中等少年院送致決定を受け、茨城農芸学院に収容されたが、昭和三十六年四月仮退院を許可されて帰宅し、その後保護司の斡旋によつて就職したが永続せず、転々として就職先を変え、夜遊をしたり喫茶店へ出入したりするような不健全な生活を送つているうち、右仮退院後三ヵ月余で原審が認定した強盗未遂の罪を犯したものであり、仮退院による保護観察の成績も極めて不良であるのみならず、少年には、爆発性及び自己顕示性が強い性質があることが、それぞれ認められるから、少年の実父が既に死亡している現在においては、少年を実母の手許におき、保護観察所の保護観察に付する等の処分だけでは、到底これを保護善導することができないものと考えられるのである。

以上の各状況を総合して判断すると、少年の犯罪的危険性は甚だ高度であつて、在宅保護の措置をもつてしてはもはやこれを改善することができないことが明らかであるから、少年法第二十四条第一項第三号により、少年を中等少年院に送致し、もつて規律ある矯正教育を受けさせる必要があるものといわなければならない。それ故、これと同趣旨に出でた原決定はまことに相当であつて、該決定には、なんら抗告人のいうような不当な点はない。

よつて、本件抗告は理由がないから、少年法第三十三条第一項後段によつてこれを棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 下村三郎 判事 高野重秋 判事 堀義次)

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